目次
1. はじめに
- アメリカの精密発酵フードを食べてみた!
- 第1弾:Perfect Day社の精密発酵アイス「Brave Robot」を多角的に分析していく
2. Perfect Day社と精密発酵ホエイ
- Perfect Day社は 乳たんぱくを精密発酵で製造
- 精密発酵ホエイのタンパク質は90%以上がβ-ラクトグロブリン
- ホエイの精密発酵は①発酵、②遠心分離、③濾過・乾燥の3工程
- 2014年アイルランド創業のスタートアップで、現在の資金調達額は7億ドルを超える
- 2022年末にはインドに製造拠点を拡充し、活発な動きを見せ続けている
3. Perfect day社の商品展開と「Brave Robot」
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ヘルシースナック商品ライン(toB、toC事業):アイスクリーム、チョコレート、プロテイン、チーズスプレッド、牛乳飲料
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手乳製品企業コラボ商品ライン(toB事業):チーズ、チョコレート
ミルクでは「Cowabunga」を共同開発・販売
チーズでは「Bold Cultr」、「Nurishh」を共同開発・販売
チョコレートでは「CO2COA」を共同開発中
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最新商品ライン(toB、toC事業):代替卵製品「ProFerm」、代替牛乳「Strive FREEMILK」、「Very Dairy」
2023年に代替卵製品の「ProFerm」を開発
2022年からは代替牛乳の「Strive FREEMILK」と「Very Dairy」をアメリカ、シンガポールそれぞれで販売開始 -
定番商品(toB、toC事業):アイスクリーム
初アイスクリームは、自社ブランドの「Perfect Day」アイスだった
初のコラボは地元アイスクリーム店、Smittenと行う
アイスクリーム商品の全米展開は、Graeter’sとのコラボで実現する
精密発酵アイスのさっぱりとした後味を生かしたのが、N!ck’sとのコラボ商品
自社CPGブランドで初の商品は、本レビューの主役でもある「Brave Robot」シリーズ
個人事業とのコラボで、イタリアンジェラートや焼き菓子商品の開発も実現した
ブランドの買収と共に、アイスクリーム商品はついにシンガポール市場にも進出した
4. まとめと次回
はじめに
アメリカの精密発酵フードを食べてみた!
近頃、フードテック業界の中でも精密発酵分野が高い注目を集めている。世界的に見ても、精密発酵を駆使した食品スタートアップに投資の矛先が向き始めている。今回は、この精密発酵がフードテックビジネスとして既に実装されているアメリカで、実際に販売されている商品を実食していく。ニュース記事などでは取り上げられにくい、「食品」としての精密発酵技術の最前線を、食と科学の観点から徹底分析していきたい。
第1弾:Perfect Day社の精密発酵アイス「Brave Robot」を多角的に分析していく
第1弾は、Perfect day社がUrgent Company社と共同開発・販売している、「Brave Robot」に焦点を当てていく。Perfect Day社商品の中でも、最も幅広く全国展開がされている、アイスクリーム商品である。全4回を通して、実際にアメリカで「Brave Robot」を購入・試食した感想と考察を、赤裸々にお伝えしていきたい。
まず1回目の今回は、「Brave Robot」の主原料ホエイを精密発酵で開発・製造する、Perfect Day社について紹介していく。2回目はパッケージなどの外観をマーケティング面、栄養面、サステイナビリティ面などから分析していく。3回目は実食の感想と、食味の観点の考察を紹介していく。そして最後4回目は、食味の感想から生まれた技術面の課題を、食品科学の観点から詳しく議論する。
全4回を通じて、美味しくて楽しい、精密発酵フードの世界にぜひ興味を持っていただきたい。
Perfect Day社と精密発酵ホエイ
Perfect Day社は 乳たんぱくを精密発酵で製造
Perfect Day社 は、精密発酵技術を駆使して乳たんぱくを開発・製造するスタートアップである。精密発酵とは、主に微生物などの発酵力のみで原料物質を生産する技術のことであり、応用例は食品だけに限らず、非食品の燃料や化粧品など多岐に渡る。乳たんぱくを含む、多くの原料物質を従来の方法で生産する場合、飼料の栽培や家畜の飼育といった、環境・労働負荷の大きい工程が必要とされる。その一方で、植物性の代替製品などは、生物学的な差異から生じる品質の違いを埋め合わせることに苦戦し続けてきた。そんな食品・非食品原料生産の課題を解決してくれると期待されているのが、精密発酵の技術である。
精密発酵ホエイのタンパク質は、90%以上がβ-ラクトグロブリン
一般に、乳たんぱくは、主にカゼインとホエイから成るが、Perfect Day社が得意とするのはホエイの生産である。Perfect Day社では、牛乳に含まれるホエイと生物学的に同一のホエイを、Trichoderma reeseiの精密発酵によって生産している。Trichoderma reeseiは糸状菌(一般的にはカビと呼ばれる)の一種であり、糖などを与えて発酵させることにより、代替ホエイを生成できる。この精密発酵ホエイと製造プロセスは、共にFDA(米国食品医薬品局)によって安全性が既に承認されている(GRAS Notice GRN 863, 2020)。先にも述べたように、生産工程において乳牛を一切使用しないことから、環境に優しくサステナブルかつエシカルな他、乳糖不耐性でも安心して摂取できる代替乳製品として注目されている。
ホエイの精密発酵は①培養、②遠心分離、③濾過・乾燥の3工程
この糸状菌の発酵からホエイを生産する精密発酵のプロセスだが、①培養、②遠心分離、③濾過・乾燥の、主に3つの工程で完成する(GRAS Notice GRN 863, 2020)。
まず①の培養では、あらかじめ用意された糸状菌を液体培地の中で培養させる。この糸状菌は、既にホエイを生産できるようプログラミングされており、野生型の糸状菌と同様に培養させることができる。生産ラインでは、大量培養するにあたり、まずスターター培養液を少量規模で生産し、それを大量培養用のバイオリアクターに投入する。バイオリアクターに投入されたのちに、糸状菌は繁殖を経て、培地の発酵を行う(GRAS Notice GRN 863, 2020)。
バイオリアクター内での発酵が完了すると、いよいよ生産された物質の抽出を行う。糸状菌によって生産されたホエイは、細胞外に分泌される上に、水溶性であるため、②遠心分離によって、比較的容易に抽出できる。遠心分離によって分離された水溶液層のみを汲み取り、最後の精製工程へと移される(GRAS Notice GRN 863, 2020)。
遠心分離によって抽出された水溶液層は、③濾過・乾燥の工程を経て、ホエイのみの粉末に精製される。まず遠心分離された液体の水溶液層は、pHの調整がなされることで、水溶タンパク中のホエイ濃度を一気に上げる。続いてその液体は濾過され、水溶液層に残っていた不純物や、ホエイ濃縮の際に生じた不要タンパク質などが取り除かれる。その後、濾過された液体は透析濾過を経て培地が完全に除去され、スプレードライヤー内での乾燥によって、液体から粉末状の固体へと加工される。粉末状の抽出物は、95%以上がタンパク質となっており、そのうちほぼ100%がβ-ラクトグロブリン(ホエイ)になっている(GRAS Notice GRN 863, 2020)。
2014年アイルランド創業のスタートアップで、現在の資金調達額は7億ドルを超える
2023年現在では資金調達額が7億ドルを超え、アメリカ精密発酵界をリードする存在となったPerfect Day社だが、元々は2014年にアイルランドで創業した食品スタートアップだった。創業者のRyan Pandya氏とPerumal Gandhi氏は、アイルランドのスタートアッププログラムでMuufriという食品スタートアップを立ち上げたのが、今日のPerfect Day社の始まりである。
Pandya氏とGandhi氏が、そもそもMuufriを創業したきっかけとなったのは、やはり植物性代替製品が抱えていた、「食品」としての限界値だった。2014年ごろには既に欧州では植物性代替食品も普及していたが、各商品の品質は、現在市場に出回るものよりも圧倒的に低かった。それでも環境保護や健康志向の観点から、欧州の代替食品需要は年々増していた。この需要と供給のギャップをどうにか埋めようと、二人はMuufriの創業に踏み切った。着実に欧州での資金調達を進めたのち、2016年MuufriはPerfect Dayとしてアメリカ市場にいよいよ進出した(Perfect Day, 2023)。
2022年にはインドに製造拠点を拡充し、シンガポールではアジア発上市
2019年にはPerfect Day社で初となる、精密発酵ホエイを使用した自社開発アイスクリームが、FDA(米国食品医薬品局)の市販前承認を無事取得し、一般販売が始まった。これを皮切りに、Perfect Day社は西海岸の委託製造会社や地元の飲食店などと共同で、新商品の開発、製造、販売を行ってきた。2020年には、FDA(米国食品医薬品局)のGRAS認証と呼ばれる、国の食品安全認証も取得し、益々商品展開に拍車をかけていった。
そして昨年11月には、アジア圏にも拡大すべく、インドの食品・製薬製造会社(Sterling Biotech Limited)を買収した。並行して、インド政府による食品安全性認証を精密発酵ホエイで取得し、アジア・太平洋市場での販売促進に向けて活発に動き続けている。また同年夏には、シンガポールにてCoolhausブランドのアイスクリームを販売開始し、アジア圏初となる、Perfect Day社商品の上市を実現した。年末にはVery Dairyブランドの代替ミルクも発売開始した。
引用元:Perfect Day
Perfect day社の商品展開
【「ヘルシースナック」商品ライン(toB、toC事業):アイスクリーム、チョコレート、プロテイン、チーズスプレッド、代替ミルク飲料】
Perfect Day社がまず得意とするのは、「へルシースナック」の商品ラインになる。精密発酵で生産されるホエイの最大の特徴は、乳糖不使用でビーガン対応な点である。加えて、精密発酵ホエイは主に乳たんぱくのホエイしか含まれていないため、商品化の際にはコレステロール含有量の調整も可能であり、「ヘルシー」文脈でも従来の乳製品とは差別化される。これらの強みを生かして開発されたのが、以下のtoC販売用スナック商品になる。
引用元:Perfect Day
おやつの定番、アイスクリームやチョコレートはもちろん、最近のプロテインブームに合わせた、プロテインドリンクやプロテインパウダーも販売されている。また日本では馴染みがないかもしれないが、アメリカでは児童の牛乳摂取を促すため、学校のカフェテリアなどでバニラやチョコなどで甘く味付けされた牛乳飲料が提供されている。そんな牛乳飲料の代替品も販売されており、児童向けのデザインとマーケティングの工夫が凝らされていた。どの商品も、精密発酵ホエイが栄養成分や機能性の側面で、大きな役割を果たしている。
また先に述べたように、Perfect Day社は多くの商品の製造を委託製造会社に任せている。ここに挙げた多くのスナックラインの商品は、The Urgent Company社にて製造されている。The Urgent Company社は、Glanbia Nutritional社で商品開発副部長を務めていたPaul Kollesoff氏が創業した会社で、カリフォルニア州バークレーに製造拠点を置いている。現在では傘下のブランドにBrave Robot、Modern Kitchen、California Performance Co.、Coolhausがあり、全てPerfect Day社とのコラボブランドとなっている。
引用元:Perfect Day
【大手乳製品企業コラボ商品ライン(toB事業):チーズ、チョコレート】
ミルクでは「Cowabunga」を共同開発・販売
Perfect Day社はtoC事業のみならず、toB事業も活発に展開している。現在までに、主にミルク、チーズ、チョコレートを大手食品企業と共同開発・販売している。
まずミルクでは、大手食品企業のネスレ社と精密発酵ミルクのCowabungaを開発・販売を行った。プレーンとチョコレートの2フレーバーを開発し、カリフォルニアのSafeway店舗で限定販売している。Perfect Day社は、これを含め計5種類の代替ミルク商品の開発・販売に成功している。油脂分には濃縮オーツと高オレイン酸ひまわり油を使用しており、カルシウムとビタミンDを補填することで、栄養価も動物性のものに引けを取らない商品となっている。
引用元:Perfect Day
チーズでは「Bold Cultr」、「Nurishh」を共同開発・販売
チーズに関しては、ハーゲンダッツなどを子会社に持つ米食品大手、General Mills社と、Bold Cultrクリームチーズの開発・販売を今年1月末まで行っていた。またベビーベルチーズ(Babybel)やブルサンチーズ(Boursin)でお馴染みの、フランスBel Group社とは、Nurishhクリームチーズの販売を現在も行っている。NurishhはBel Groupが手掛けるアニマルフリーブランドで、既にチェダーチーズなどは植物性代替素材で開発・販売されている。今回Perfect Day社が共同開発したのは、同商品ラインのスプレッドタイプのクリームチーズで、オリジナル、チャイブ&オニオン、ストロベリーの3フレーバーの展開している。Perfect Day社の精密発酵ホエイが原料となり、乳たんぱく部分を代替している。Nurishhクリームチーズスプレッドは、現在も全米各地で販売されている。
引用元:Perfect Day
チョコレートでは「CO2COA」を共同開発中
また、チョコレートに関してはアメリカの一大製菓ブランド、Mars & Wrigley社と共同開発を行っている。このCO2COAでは、一般的な板チョコレートの乳化剤として、Perfect Day社の精密発酵ホエイを使用しているそうだ。Mars & Wrigley社はアメリカの食品大手として、環境面・エシカル面を配慮した商品の開発に力をいれているようで、同商品のカカオも、レインフォレストアライアンス認証(熱帯雨林の保全に配慮した農法で生産されていることの証明)を取得した原料を使用している。当初は昨年6月より随時販売される予定となっていたが、現時点ではまだ一般向けに販売はされていない。
引用元:Perfect Day
【最新商品ライン(toB、toC事業):代替卵製品「Bakery Egg Replacer」、代替牛乳「Strive FREEMILK」、「Very Dairy」】
今年初めに代替卵製品「Bakery Egg Replacer」を開発・販売
Perfect Day社が先月、toC、toB向けに新しく開発したのが、この代替卵製品の「ProFerm」だ。代替卵製品とはいえ、原料はPerfect Day社の精密発酵ホエイに加え、炭水化物系の増粘剤と甘味料、固化防止剤であり、あくまで卵の物理化学的性質を模した商品になっている。商品説明にも、製菓用途での代替卵としての使用を推奨しており、Perfect Day社担当者に問い合わせたところ、卵の風味等はほぼないそう。ただ興味深いのは、乳たんぱくのホエイが、炭水化物などと配合されることで、卵たんぱくと同様の物理化学的性質を発揮できるという科学的な側面である。卵たんぱくを微生物に生産させるプロセスを一から作り変えるのではなく、科学の力をもって、GRAS認証済みで汎用性の効く既存の物質から新商品を開発する試みはとても革新的だと感じた。
2022年からは代替牛乳の「Strive FREEMILK」と「Very Dairy」をアメリカ、シンガポールそれぞれで販売開始
一方、代替牛乳の商品ラインでは、昨年6月にStrive Nutrition社と「Strive FREEMILK」を販売開始した。Strive Nutrition社は従来品と代替品両方の牛乳をパッケージ・販売する個人経営の会社で、元々はオーツミルクなどを中心に、動物由来の牛乳に栄養面でも劣らない代替牛乳の販売を目指していた。このPerfect Day社とのコラボにより、精密発酵ホエイのみをたんぱく源として配合した「Strive FREEMILK」に加え、オーツミルクとアーモンドミルクそれぞれに精密発酵ホエイを添加した「Strive OAT」、「Strive ALMOND」が発売された。「Strive OAT」、「Strive ALMOND」では、植物性の代替牛乳では補えなかった動物性たんぱく由来の栄養素を、補填した商品として売り出している。
引用元:Perfect Day
そして昨年末には、シンガポールに市場拡大をした同社が、アジア圏で初めて、自社精密発酵ホエイを使用した代替牛乳を、一般消費者向けに販売開始した。その代替牛乳が「Very Dairy」という商品ラインで、プレーン、イチゴ、チョコレートの3フレーバー展開がなされている。乳糖やコレステロールに加え、乳牛に与えられるホルモンや抗生物質などの残留化学物質も含まれていない点で、従来の生乳との差別化がなされている。この代替牛乳は先述の「Bored Cow」と違い、あくまで従来の牛乳の代替製品として売り出されている。そのため、甘さも生乳に近いものを目指しているせいか、甘味料はスクロースを使用しており、原材料全体では4番目に多い量でしか含まれていない。他方「Bored Cow」は、子ども向けにわざと甘めの味付けにしているためか、甘味料はアルロースを使用し、全原材料の中でも2番目に多い量が含まれている。
引用元:Very Dairy
【定番商品ライン(toB、toC事業):アイスクリーム】
最後に紹介するのは、Perfect Day社が創業から試行錯誤を続けている、アイスクリーム商品である。アイスクリーム商品に関しては、ヘルシースナック商品でもお話ししたが、ここでは初代のアイスクリーム商品から最新のものまでを、詳しくお話しする。また、この商品レビュー第一弾も、Perfect Day社のアイスクリームである「Brave Robot」について分析していく。
初代アイスクリームは、自社ブランドの「Perfect Day」アイスだった
まず、Perfect Day社の第一商品として販売されたのが、Perfect Dayアイスクリームになる。この初代Perfect Dayアイスクリームは、自社ラベルで3フレーバーのみの展開となっていた。またこれらのフレーバーの中には、シンプルなミルク味やバニラ味はなく、「バニラ・塩ファッジ」、「ミルキーチョコ」、「バニラ・ブラックベリー・トフィー」といった、「バニラ」や「ミルク」の要素は含ませつつも、他の味でカバ―したフレーバー展開になっていた。このことから、当時こそ「バニラ」や「ミルク」といったシンプルな味で勝負できるほど、従来のアイスクリームに近いコクや味が再現できていなかったものと考えられる。
引用元:Perfect Day
初のコラボは地元アイスクリーム店、Smittenと行う
その後2020年春ごろには、Perfect Day社が本社を構える米カリフォルニアの地元アイスクリーム店、Smittenにてコラボアイスクリーム商品が開発・販売される。これがPerfect Dayにとって初めての他社コラボ商品となる。「Smitten N’Ice cream」というブランド名で、ブラウンシュガー・チョコレート、フレッシュ・ストロベリー、ココナツ・ピーカン、ルートビア・フロートの4フレーバー展開がされていた。現在は販売終了してしまっているが、後に続くコラボ商品の先駆的な事業となった。
引用元:Perfect Day
アイスクリーム商品の全米展開は、Graeter’sとのコラボで実現する
2020年末には、米老舗アイスクリームブランドのGraeter’sとのコラボ商品の販売が実現した。フレーバーは、ブラックチェリー・チョコチップ、クッキー&クリーム、オレゴン・ストロベリー、チョコミント、チョコレート&チョコチップの5つで展開されていた。また、この時点で既に追加フレーバーの開発も進めていると発表しており、後に加わるマダガスカル・バニラの販売も示唆していた。またこの商品は、店舗販売だけでなく、オンライン販売も当初から行っており、Perfect Day社の精密発酵ホエイを使用したアイスが全米の顧客に届くきっかけとなった。Graeter’sとのコラボアイスは現在もオンライン販売されており、ブラックチェリー・チョコチップ、ブラックラズベリー・チョコチップ、クッキー&クリーム、マダガスカル・バニラの4フレーバー展開となっている。
引用元:Perfect Day
精密発酵アイスのさっぱりとした後味を生かしたのが、N!ck’sとのコラボ商品
そして2021年初めには、現在も販売が続くN!ck’sとのコラボ商品が発売された。N!ck’sはそれまでのアイスクリーム商品とは違い、スウェーデン・スタイルのアイスクリーム商品として販売している。スウェーデン・スタイルのアイスクリームは、植物性の油脂をしているなどの理由で、元々さっぱりとした後味が特徴となっている。Perfect Day社の精密発酵ホエイを使用したアイスクリームがあっさりとした後味を持つことを考慮し、あえて同じような味の特徴を持つ商品として売り出してものと考えられる。N!ck’sとのコラボ商品は、現在も変わらない、ヘーゼルナッツ、バニラ、チョコミント、チョコ、ピーナッツバター、キャラメル、ストロベリーの7つのフレーバーで販売していた。
引用元:Perfect Day
自社CPGブランドで初の商品は、本レビューの主役でもある「Brave Robot」シリーズ
2021年春には、The Urgent Company社からの初商品として、「Brave Robot」が登場する。The Urgent Company社自体は、2020年までに既に立ち上がっていた。The Urgent Company社は、Perfect Day社の創業者2人が、商品だけでなく、それらのパッケージングや物流管理、販売を含む、食品販売全体の環境負荷を削減するCPGメーカーの立ち上げを目指して、創業された。そしてそのThe Urgent Companyから販売された第一号商品が、「Brave Robot」のアイスクリーム商品となった。バニラ、チョコレート、バニラ&クッキー、バター・ピーカン、ピーナッツバター&ファッジ、ブルーベリーパイ、ヘーゼルナッツ・チョコレート、ラズベリー・ホワイトトリュフの8フレーバーが並んだ。「Brave Robot」シリーズは現在も全米で販売されているものの、フレーバーは当初から少し変化している。また今回の商品紹介の後半では、この「Brave Robot」のチョコレートチップ・クッキードー味について、試食した感想と科学的な考察をお伝えしていく。
引用元:Perfect Day
個人事業とのコラボで、イタリアンジェラートや焼き菓子商品の開発も実現した
2021年秋には、アリゾナ州でイタリアンジェラートやドルチェの開発・販売をビジネス向けに行う個人経営のアイスクリーム店、Villa Dorceとのコラボ商品を発売した。今までは一般的なアイスクリームやスウェーデン・スタイルのアイスクリームの商品のみを扱っていたが、この事業を通して初めて、精密発酵ホエイのジェラートや焼き菓子への応用も実現させた。ジェラートは、焦がしキャラメル・プラリネ、ピスタチオ・ラテ、ストロベリー・ダークチョコ、チョコレート・オレンジ、塩バニラ・ハニーコーム、キャラメル・コールドブリュー、タヒチ・バニラの7フレーバーを販売している。またドルチェの商品ラインでは、チョコチップ・クッキードー、南部ピーカン・ブラウンバターケーキ、フォンダンショコラ、シチリア産ピスタチオ・トルテの4商品が販売されている。どれも全て業務用販売となっており、イベント等での大量発注を想定した販売がなされている。
引用元:Perfect Day
ブランドの買収と共に、アイスクリーム商品はついにシンガポール市場にも進出した
そして最後に、2021年末、プラントベースのアイスクリーム商品を中心に販売していたCoolhausを、The Urgent Company社が買収し、Coolhausブランドで初めてとなる精密発酵商品が販売された。アメリカ市場、シンガポール市場共に販売されているCoolhausの精密発酵商品は、当時と変わらず現在も、2フレーバーのクッキーサンドアイスのみとなっている。
引用元:Perfect Day
まとめと次回
精密発酵の商品レビュー第1弾初回った今回は、エイを精密発酵で作るPerfect Day社紹介した。発酵技術での生産が実現されたホエイは、今やアメリカ国内はもちろん、アジア圏の市場でも、様々な商品の形になって消費者に親しまれている。次回からはいよいよ、Perfect Day社とその自社CPGブランドThe Urgent Company社が販売している、「Brave Robot」の詳しい商品紹介を行っていく。まずは、パッケージなどの外観をマーケティング面、栄養面、サステイナビリティ面などから紹介していく。実際に試食した感想や、精密発酵アイスの科学的な考察などを、3回目、4回目では紹介していくので、ぜひお楽しみに。