2024年3月27日東京渋谷にて、培養肉や細胞農業をテーマにしたスタートアップカンファレンス、Cultured Meat Symposium Japanが開催されました。Cultured Meat Symposium (CMS) は、米シリコンバレーで開催されてきたイベントです。この度弊協会は、CMS 2024における主催者Alex Shirazi氏との交流をきっかけに、共同オーガナイザーとしてCMSを日本に誘致し、企画運営に携わりました。アメリカのベンチャーキャピタルPlug and Play 社の日本法人であるPlug and Play Japanとも提携し、会場をご提供いただきました。
今回のCMS Japanは「新たなタンパク質を創造する技術開発の架け橋となるために!」というテーマの下で、日本・シンガポール・米・英からのスタートアップ6社にご登壇、60名以上の方にご参加いただきました。
Shirazi氏からのオープニングトークでは、CMSの紹介と日本開催の意義についてお話がありました。氏にとってたこ焼きという食べ物が、食べるのを躊躇う新規の食から、親しんだ好みの食に変わったように、培養肉を始めとした細胞農業作物が大衆に広まるだろう、という話が印象的でした。続いて弊協会理事の岡田から日本開催に至った経緯が紹介されました。Plug and Play Japanの吉岡忠祐氏からも事業の紹介などのご挨拶がありました。
本編のトークセッションでは、以下の6名に登壇いただきました。
羽生雄毅 氏 (Integriculture 代表取締役 CEO:https://integriculture.com/)
独自の細胞培養の材料や培養技術を開発するだけでなく、細胞農業インフラの技術基盤を提供している日本企業です。日本ではインフラが未整備でありながらも、既存のメソッドを活かせる高いポテンシャルが眠っていることが指摘されました。同社からはブースの出展もあり、来場者がバイオリアクター等を実際に見ることができました。
Nina Honda/Strasky 氏 (Umami Bioworks Product & strategyマネージャー:https://umamibioworks.com/)
Umami Bioworksは細胞性水産物の開発と製造プロセスのプラットフォームを構築しているシンガポール企業です。日本の海産物市場に特化して、産業を切り開いていくロードマップが示されました。
Max Jamilly 氏 (Hoxton Farms 創業者兼CEO:https://hoxtonfarms.com/)
動物性脂肪の培養技術を活用し、代替肉製品に本物の脂肪の風味をもたらすことを目指している英国企業です。健康・環境にやさしい油の需要が世界的に高まっており、それに応える準備過程の報告がありました。また、住友商事と連携して、日本市場への参入を本格化することが発表されました。
Andrew Sayles 氏 (Livestock Labs 共同創業者:https://livestock-labs.com/)
米国で関わってきた氏からは、業界全体が分業・連携する「Cultivated Meat 2.0」の段階に移行する必要性が呼びかけられました。各プレイヤーが専門性を活かして協力することで、生産最適によるコスト削減、開発や投資のリスク分散が可能となり、消費者が手頃な価格で培養肉を購入できる未来が実現できると説かれました。
山木多恵子 氏 (オルガノイドファーム 代表取締役:https://organoid.farm/)
国内の牛肉生産者の協力の元、高い増殖能・分化能を持つ細胞株開発や、コスト削減と柔軟な加工を可能にする浮遊培養に成功したなどの成果報告がありました。また、2025年には大規模生産のテストを、2030年には商業生産に向けた基盤形成を行うロードマップが示され、B2B市場進出に向けたパートナーシップを募る旨が呼びかけられました。
Anita Broellochs 氏(Balletic Foods 創業者兼CEO:https://balleticfoods.com/)
CMSの運営としても業界に長く関わってきた氏からは、世界的な動向の分析と課題がまとめられました。現状を打破するための戦略8点が提示され、研究を促進する環境整備、社会受容のための準備の必要性が強調されました。
国内外の方が登壇されたこともあり、培養肉産業全体の俯瞰と、日本やアジアの動向とを横断する熱い議論が繰り広げられました。本編終了後のネットワーキングセッションでも、沢山の新しい交流が始まる様子が見うけれました。
今回、学術的な色が強い細胞農業会議とも異なり、スタートアップに特化したイベントを開催できたことは、日本の細胞農業界にとって意義深いと感じています。またこのような機会を開催できることを期待します!
CMS Japan開催にご協力いただいた皆様に、御礼申し上げます。
スポンサー:IntegriCulture,住友理工株式会社/SUMITOMO RIKO COMPANY LIMITED, Alfa Laval, Forsea, Foovo, Plug and Play Japan株式会社
本イベントレポートは、下記メディアにも掲載されています。併せてご覧ください。
Foovo:https://foodtech-japan.com/2025/03/28/cms-japan/
日経バイオテク:https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/020100064/032800026/